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屏東恆春の音楽フェス「2022年 半島歌謠祭」に参加してきました!【前編】

2022.5.11

台湾最南端に位置する恆春半島にて行われた音楽イベント「2022年 半島歌謡祭」に参加してきました! 子供からおばあちゃんまで、年齢を問わずみんなが主役になる地元密着型のイベントの様子を、前後編のレポートでお届けします♪

台湾最南端に位置する恆春半島。台湾一のビーチリゾート地として国内外を問わず人気のある恆春ですが、実は約140年前の清国時代に建てられた城門と城壁が残っている遺跡都市でもあるんです。

交通も決して便利ではなく、厳しい自然環境の中で生活してきた恆春の人々は、日々の苦しさや想いを民謡にして歌ってきたといいます。長年愛されてきたこの「民謡」を新しい形で伝承していこうという取り組みが、恆春を愛する若者を中心として、地域を挙げて続けられています。

その代表的なイベントが、毎年開催されている音楽フェス「半島歌謡祭」! 幼稚園児の子供たちから100歳近いおばあちゃん達まで、年齢を問わずみんなが主役の地元密着型イベントとして知られています。

1-10 写真提供:半島歌謡祭

コロナ禍で半年間の延期を経て、ついに盛大に開催された2022年の半島歌謡祭! 実際に現地で参加してきたので、イベントレポートを通じて、恆春の魅力をたっぷりご紹介します♪

台湾最南端の屏東県・恆春半島ってどんなところ?

台湾最南端に位置する「恆春(ヘンチュン/héngchūn )半島」。台湾南部の都市「高雄」から更に車で2時間ほど南下したところにあり、屏東県に属します。

屏東恆春の音楽フェス「2022年 半島歌謠祭」白沙湾にて撮影

東を太平洋、南をバシー海峡、西を台湾海峡という3方海で囲まれた恆春半島は、サーフィンやダイビングなどのマリンスポーツを楽しめる常夏のリゾート地として大人気!

半島の南部に位置するリゾートエリア「墾丁(ケンティン/kěndīng)」については、以前のこちらの記事で詳しくご紹介しています。

屏東恆春の音楽フェス「2022年 半島歌謠祭」 龍磐大草原にて撮影

また、半島の南端は「墾丁国家公園」に指定されています。サンゴ礁をはじめ台湾特有の梅花鹿や野鳥など、熱帯気候特有の生態系が広く保護されています。

1-3 出典:屏東県政府HP https://www.pthg.gov.tw/traffic/cp.aspx?n=CE2BB7A2AE92AEEB&s=0EE1B01818AAE990

そして、今回のイベントの開催地である「恒春」は、恒春鎮(鎮は台湾の行政区分の1つ)の中心部。北から墾丁へと南下する際に必ず通る町でもあり、恒春古城とも言われます。

2008年に公開されて台湾で歴史的大ヒットとなった映画「海角七号 君想う、国境の南(原題:海角七號)」の舞台として、恒春の地名を耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。ここ恒春を舞台に繰り広げられた日本と台湾をつなぐ感動の物語が、日台の多くの人々の心をつかみましたよね。映画のロケ地は今でもなお人気スポットとなっています。

140年以上の歴史ある城壁の上を歩ける恆春古城

屏東恆春の音楽フェス「2022年 半島歌謠祭」

恆春古城の歴史は長く、約140年前の清王朝の時代にまで遡ります。この町のシンボルである東西南北に設けられた城門と町をぐるっと囲む城壁は、1875年に清国から派遣された大臣により建設が開始され、1879年に完成しました。台湾で唯一軍事目的のために作られた防御都市でもあります。 城門の上には当時砲台の台となっていた石や、敵を確認するために使われていた覗き穴などが今でも残っています。

1-5 撮影:大西稚恵

城門と城壁はその後大幅な修復を経て、今では台湾で最も当時の状態のまま現存している遺跡の町に。1985年には二級国定古跡にも指定されています。

屏東恆春の音楽フェス「2022年 半島歌謠祭」

城壁の上には誰でも自由に登れるようになっています。地元のみなさんはここで休憩をしたり、お散歩を楽しんだり。遺跡が生活の一部に溶け込んでいる様子がとても特別に感じられました。

1-7 撮影:大西稚恵

西門の近くには大きな広場があり、そこから南門近くのバスターミナルまで、古くからの商店街が続いていいて、観光客も多く賑わっています。城壁に加えて、町には昔の建物、廟なども多く残っていて、ノスタルジックな雰囲気が味わえます。

恆春の人々と共に歩んできた民謡の存在

そんな恆春で代々伝承されてきた文化の1つが「恆春民謡」です。
今の恆春のおばあちゃん、おじいちゃん世代は、多くの人が農業で生計を立ててきました。また、昔は親が決めた相手のところに嫁ぐしかなかった時代。女性は胸の内を簡単には明かすことができなかったといいます。そんな日々の生活や労働の苦しさ、女性のやるせない想いを、人々は民謡にして歌い、共に乗り越えてきたそうです。

地元の方に民謡についてお話を伺った際、「恆春民謡とは、恆春の人々の対話と心情の記録そのものなんだよ!」とおっしゃっていたのが印象的でした。

また、恆春民謡という独自の文化が形成された原因の1つとして、半島における民族の多様性があげられます。恆春半島では、多くの原住民族、中国から移民としてやってきた漢民族、客家人等、様々な民族が共に暮らしてきました。民族間の交流を通じて、互いの文化が影響し合うことによって、恆春独自の音楽文化が形成されたのです。さらに、昔はこの辺りは特に交通が不便だったことから、外からの影響を受けにくく、その結果、この土地の音楽が完全な形で発展していきました。

屏東恆春の音楽フェス「2022年 半島歌謠祭」

恆春民謡は「月琴」という撥弦楽器でメロディーを演奏し、そこに歌詞をのせて歌われます。月琴は英語でムーンギターと呼ばれるように、満月のようなまん丸のボディーが特徴的な中国発祥の伝統楽器。ギターと比べてとても繊細な音量で、ポロンポロンと優しいメロディーが心に響きます。恆春の町中には、この月琴をモチーフにした看板や電柱があちこちに。

恆春民謡の特徴は自由自在なこと♪ 曲調は6~7つの決まったメロディー(「思想起」、「四季春」、「平埔調」、「牛母伴」、「五孔小調」、「守牛調」等)がありますが、演奏者が好きにアレンジしてOK!また、決まった歌詞はなく、歌い手が各自の想いをのせて自由に歌うことができます。歌は現地で日常的に使われてきた台湾語で歌われます。

台湾語は声調が中国語の倍もあり、音声変化がとっても豊かな言語。台湾語特有のイントネーションに乗せて、人々の感情がより深く伝わってくるように感じます。

屏東恆春の音楽フェス「2022年 半島歌謠祭」 恆春民謡館にて行われていた陳達氏の展示

恆春民謡が台湾全土で注目されるようになったのは、1970年代になった頃。ちょうど台湾では郷土文化運動が盛り上がっていたときで、民間音楽採取運動を通じて恆春民謡が見いだされたそうです。台湾民謡界における重要人物といわれる「陳達」氏もこの頃から活躍し始めました。彼の歌う「思想起」は、今では恆春民謡の代表曲と言われています。

民謡伝唱をテーマにした地元密着型の音楽フェス「半島歌謡祭」

無形文化財にも認定された恆春民謡。これを後世に伝えていこうという取り組みが、人間国宝である高英さんらを中心に、長年行われてきました。また屏東県政府は、郷土教育推進の一環として、2008年から「恆春国際民謡音楽節」を開催。その後、開催10年目の2018年に、時代の流れに合わせてイベントの形態が大きくリニューアルされ、現在の「半島歌謡祭」として再スタートを切ることになりました。

1-10 写真提供:半島歌謡祭

半島歌謡祭は、恆春を愛する若者達が立ち上げた地方創生に取り組む団体・会社が主催者となって、企画・運営が進められています。

「伝統的な民謡」と「多元的な現代音楽」とを融合させ、「古いものを守りながらもイノベーションを起こしていく!」(中国語では「守舊如新」)をテーマに、毎年様々な取り組みが行われています。

年に1度の開催で、4年目となる今回の半島歌謡祭。コロナの影響により半年の延期を経て、2022年3月18日~20日の3日間、恆春西門そばの広場にて盛大に開催されました。

2022年半島歌謡祭のオフィシャルムービー

ここまで読んでいただいた皆さんは、きっと「で、一体どんなイベントなの?」とお思いですよね。 そこで、まずはこちらのオフィシャルムービーをご覧ください!

恆春民謡をアレンジした明るいテーマソング。また、人間国宝の高李正姫さんをはじめ、民謡を楽しむ恆春の皆さんの笑顔がとっても素敵なムービーになっています。 明るい南国、恆春の世界に一気に引き込まれるような気分になりませんか♪

オフィシャルショートムービーで恆春生活を疑似体験!

また、こちらのショートムービーもオススメ!
台北の都会から来た小嫻(台湾の女性タレントの黄瑜嫻さん)が恆春で生活をしながら、阿嬤(おばあちゃん)達に民謡と月琴を教わるというストーリー。残念ながら日本語字幕はありませんが、恆春の美しい大自然、ノスタルジックな町並みや生活感、民謡と共に生活してきた阿嬤達とのやりとりをぜひ映像から感じてみてくださいね。

※こちらの動画は予告編です。本編は上下に分かれて公開されています

町全体を挙げての地域密着型イベント!

恆春の町に入って、最初に目についたのがこちらのイベントゲート!

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「おばあちゃん家、こっち↓」、「めっちゃ遠い!」など、道路案内標識を使って恆春を面白く表したデザインが話題となり、フォトスポットにもなっていました。

1-12 撮影:大西稚恵

町にある3店舗のセブンイレブンもすべてイベント仕様に。なんとイベントの生中継を行っている店舗までありました。町中に溢れるイベントへの熱量、地元愛を感じ、ますます期待が高まります!

屏東恆春の音楽フェス「2022年 半島歌謠祭」

半島歌謡祭の詳しいイベントレポートは後編にて! お楽しみに♪

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