2026.1.20
台湾の里山ストーリーを伝える「台湾 SATOYAMA イニシアティブ絵本」日本語版の発売が決定したということで、Howto Taiwanでは、誠品生活日本橋にて行われた出版記念・先行発売イベントに潜入! 絵本制作を担当した「種籽設計 SEED DESIGN」の代表も来日し、作品に込めた想いを語りました。イベントレポート形式でお届けします。
大家好〜! 編集長の小伶です。
いま、日本でじわじわと注目を集めている “里山(さとやま)” というキーワード。自然豊かな土地への移住や、SDGs やサステナブルな暮らしへの関心の高まりから、現在は「SATOYAMA イニシアティブ」という日本発の理念を元にした国際的な取り組みにまで発展しています。
実はそんなムーブメントが台湾にも広がっていて、台湾の美しく雄大な自然や、土地の恵みを活かした人々の暮らしの知恵を広く伝え、守っていこうと、台湾の里山ストーリーを伝える「台湾 SATOYAMA イニシアティブ絵本」が発表されています。
2022年に出版された第一弾シリーズに続き、2025年12月には第二弾となる4タイトルを発表。

見ているだけでウットリしてしまう、子供から大人まで楽しめる絵本シリーズ。実在する台湾各地の農村の4つの物語の中で、人と自然がともに育んできた暮らしの風景が描かれているのですが、これが本当に美しくて……!
ページをめくってみると、あっと驚くようなクリエイティブな仕掛けも満載で、ほれぼれしてしまいます。


この絵本シリーズの制作を手掛けたのが、台湾を代表するデザインスタジオ「種籽設計 SEED DESIGN」。台湾でもさまざまな絵本や展示、商品デザインなどを手掛けているので、おそらく関連商品を目にしたことがある方も多いはず。
2025年12月22日(月)に行われた、本書シリーズの日本語版出版記念イベントには、なんと種籽設計の代表も登場! 代表が自ら取材や執筆を手掛けた4作品について語りました。本イベントの様子をレポート形式でご紹介していきます!
全国の書店で本格発売されることが決定したのは「白い石は陸に上がり、黒い石は海へ潜る」、「小さな台湾白魚は大波を生む」、「カタグロトビの歌」、「百分橋を越えて」の4作品。

12月より先行発売として誠品生活日本橋ほか、代官山 蔦屋書店、代官山 蔦屋書店ECショップなどでも購入可能(一般発売は2月上旬予定)。まるでアート作品のような絵本なので、まずは手にとって、ぜひその迫力を見ていただきたいです…!
2025年12月22日(月)には、本シリーズの出版記念イベントが誠品生活日本橋にて開催されました。

イベントには、本シリーズの制作を手掛けたデザインスタジオ「種籽設計 SEED DESIGN」の陳献棋(チン・シエンチー)代表が登場! 制作の裏側を直接聞くことができる、またとない機会です。

絵本の企画や取材、執筆まで、自ら手掛けたという陳さん。実はもともとは記者として19年間働いていたそうで、複雑な物語を分かりやすく簡潔に伝えるという当時のテクニックを、絵本制作の過程でも大いに活用したと話していました。
ここからは、4つの物語(絵本)について、一つずつ丁寧に解説していきます。
1冊目は「白い石は陸に上がり、黒い石は海へ潜る」。
舞台となっているのは、台湾の離島・澎湖島。台風よりも強い東北季節風が冬の日常となっているこの土地の住民たちは、この強風と共存するため、白い石(珊瑚礁)と黒い石(玄武岩)を巧みに活用した生活様式を発達させてきました。

白い石(珊瑚礁)で「菜宅」と呼ばれる風よけを作り、黒い石(玄武岩)で「石滬」と呼ばれる魚を捕る仕掛けを海中に築きます。まさに、地域資源を最大限活用した知恵……! この石滬については、大きなハートの形をした「雙心石滬」も有名で、澎湖島の観光名所の一つとしても知られていますよね。

続いては、2冊目「小さな台湾白魚は大波を生む」。
この作品で描かれたのは、南投県の埔里鎮にある一新コミュニティでの取り組み。ここでは “台湾白魚” という珍しい魚種が発見されたことをきっかけに、魚との共存を図るため、住民たちは有機農法への転換を決意したのだそう。川の水位が下がる乾季には、魚のための「避難池」を作って魚を一時的に避難させたりと、絶滅危惧種となった台湾白魚を守るために工夫したお話を一つの物語にしています。

3冊目の「カタグロトビの歌」で描かれているのは、台湾中部・霧峰地区の田園風景。台湾のお米「益全香米」の産地として知られていますが、農薬を使わない有機栽培を維持するために、水を使って雑草対策をする方法が主流だったのですが、それによってネズミの被害が深刻になっていました。
そこに現れたのが、肩黒鳶(カタグロトビ)という鳥。この鳥は一日に8匹のネズミを捕食する能力があるため、栽培地の中に住むネズミ対策に有機栽培面積は6ヘクタールから100ヘクタールまで拡大したのだとか。

カタグロトビの鳴き声が台湾の美しい田園風景に響く情景が、おもわず目に浮かびます。いまでは地域の象徴としても知られるようになったカタグロトビ。地元の高品質な米ブランドを広くアピールする存在にもなっているそうです。

https://www.twovirgins.jp/book/9784867910801/
最後、4冊目は「百分橋を越えて」。
この絵本で描かれている新竹県北埔郷の南埔コミュニティは、”台湾のシリコンバレー” として有名な科学園区の近くに位置しています。多くの若者たちがこの科学園区にやってきたことにより、青年と年長者が協力して行政区分を越えた農村の生態系づくりの取り組みがスタートしました。

https://www.twovirgins.jp/book/9784867910818/
用水路の復旧や、除草作業、どれも「シーシュポスの呪い」のような永続的な作業だと語る陳さん。しかし、こうしたプロセスを経て、現在の多くの人々が集まるコミュニティとしても再生したのだといいます。

それぞれに違った土地や自然の魅力が詰まった四作品。
アート作品のような美しい絵と、詩的な文章を通じて、台湾の人々がいかに自然と共存しながら課題を解決していったのか? という物語を垣間見ることができました。

陳さんによるプレゼンテーションが終了したあとは、里山のライフスタイルを伝える雑誌『Soil mag.(ソイルマグ)』編集長の曽田夕紀子さんをゲストに迎えてのトークセッションも行われましたよ〜!
制作過程においての苦労について質問された陳さんが、20ページという制約のなかで物語を完結させる難しさについて話していたのが印象的でした。これまでに多くの絵本制作を手掛けてきた「種籽設計 SEED DESIGN」ですが、”里山イニシアティブ” という理念やその精神を、目に見える形で表現することは容易ではなかったとか。
少しおもしろかったのが、台湾の人が ”里山(さとやま)” という文字を見ると、台湾を代表する ”阿里山(ありさん)” と混同することが多いということ(そりゃそうだ…!)。長い時間をかけて普及啓発活動を繰り返し、少しずつ “里山” の概念が、台湾でも理解されるようになったと話していました。

また、日本と同じように台湾でも野生の熊の問題があるそうで、上の世代の人々が大切にしてきた熊との棲み分けのための貴重な知恵を、しっかりと記録し、継承していく必要があるというお話も。
自然との共存の土台となる持続可能性は、若い世代の支持があってこそ達成されるもの。今回こうした台湾の物語を、世代を問わずに手にすることができる “絵本” というかたちで発表することの意義を、改めて感じさせられました。

以上、日本で行われた「台湾 SATOYAMA イニシアティブ絵本」日本語版出版イベントのレポートをお届けしました!
少し話はそれますが、さまざまな社会課題を、若者からの関心も得やすい “デザイン” という切り口を通して解決する取り組みも、いま世界から大きな注目を集めています。環境保護や多様性など、国際的な問題にいち早く取り組んできた台湾ーー。そうした背景を踏まえると、今回「里山:SATOYAMA」という世代を越えて守るべき概念を、デザイン性の高い絵本として表現していること自体が、なによりも先進的な取り組みのようにも感じました。

そんな台湾の取り組みから学ぶことはこれからもたくさんありそう……!
「台湾 SATOYAMA イニシアティブ絵本」、とっても素敵な絵本シリーズなので、ぜひ書店などで一度手にとってみてくださいね。最後までご覧いただき、ありがとうございました!
Photo:Satoshi Kaneko
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