2017.1.21
蔡依林が歌うバラード「台灣的心跳聲(台湾の鼓動)」、台湾の良さが歌詞に散りばめられたこの一曲は、どこか懐かしいメロディーで台湾の人々の温かさや文化の豊かさを伝えてくれる台湾のテーマソング。一度聞けば、もっと台湾が好きになること間違いなしのこの曲を、歌詞に登場するシンボルの解説とともにご紹介します。
こんにちは!ゲストキュレーターのりょうです。突然ですが皆さん、「台灣的心跳聲(タイワンダシンティアオシェン:táiwān de xīn tiào shēng):台湾の鼓動」という歌を聴いたことがありますか?
この曲は、2010年上海万博の台湾館のテーマソング。公開された当時、たった4分15秒の中に台湾の魅力が詰まっていると話題になった、珠玉のバラードなんです。この曲を歌うのは、台湾だけでなく中国大陸や香港でも大人気の女性歌手・蔡依林(ジョリン・ツァイ)。
出典:http://www.nownews.com/n/2015/03/26/1651422
台湾の有名なスポットや文化、自然、そして温かい台湾人の人柄などが歌詞に散りばめられ、PVにも台湾を象徴するようなキーワードがたくさん詰まっています。私も最初にこの曲のMVを見たときに、その温かいメロディー・歌詞やMVに登場する穏やかな光景に思わずうるっとしてしまいました…。
今回は、この一曲の歌詞と、そこに登場する台湾のシンボルをあわせてご紹介します。
まずは、公式のPVとして公開されたこちらの動画をぜひご覧ください♪
MVに登場する人々の笑顔、台湾の自然や文化、蔡依林の優しい歌声に、思わず魅了されてしまいますよね。ちなみに歌詞を担当した方文山(ヴィンセント・ファン)は、台湾の花蓮出身の作詞家。中華圏で絶大な人気を誇る、周杰倫(ジェイ・チョウ)のヒット曲の歌詞を数々担当し、その美しい詩的な表現で、台湾では知らない人はいないほどのアーティストでもあります。
是非その美しい世界観を理解した上で聞いていただきたい!というわけで、方文山が手がけた歌詞を、その意味とあわせて、一部引用にてご紹介します。
歌詞の一部と、そこに登場する台湾のシンボルをまとめました(中国語歌詞:https://mojim.com/jpy100163x36x1.htm より)。
“ 許個願吧(願いをかけよう)
那長春藤攀上 生鏽的消防栓(アイビーが錆びついた消火栓に絡まる)
像蝴蝶離不開 有花香的地方(まるで蝶々が花香る場所から離れられないかのように)
寧靜的小巷 一杯永和豆漿(静かな狭い路地[1] 永和豆漿の豆乳[2])
我在細細品嘗 恬淡的家鄉(私はじっくりとかみしめる 穏やかな故郷を)”
「小巷」は大通りから折れた狭い路地という意味。台湾ではよく、この「小巷」でこそ風情溢れるお店・景色や人の温かさなどに触れ合える、と言われます。
出典:http://travel.ettoday.net/article/473703.htm
台湾の「小巷」には、朝ごはん屋さんや小吃のお店など、地元の人が愛するお店もたくさん。また、ゆったりと時が流れるのを楽しめるのも、大通りをはずれた「小巷」にしかない魅力です。
台湾の朝といえば、伝統的な朝ごはん屋さんである「豆漿(豆乳)」屋さん。中でも「永和豆漿大王」という名前で知られる朝ごはんチェーン店では、豆漿から小籠包まで様々なメニューが用意されています。
出典:http://www.tabetaiwan.com/archives/45701590.html
こちらの記事でもご紹介したとおり、外食文化の根強い台湾では、朝ごはんも外で買って食べる人が多く、朝ごはん屋さんは毎日どこも地元のお客さんで賑わっているんですね。
忙しいはずの朝も食事を楽しむことを忘れない、そんな台湾の穏やかな朝を体験できる、台湾を代表するスポットです。
“霓虹燈點亮 關於夜市的想像(ネオンが光り 夜市を想像させる)
孩子們捉迷藏 在找愛吃的糖(子供たちはかくれんぼをしたり 大好きな飴を探したりしている)
昏黃的夕陽 龍山寺的老牆(ほのかな橙色の夕陽、龍山寺[3]の歴史ある壁)
我虔誠點著香 手拿一炷希望(私は心を込めて線香に火をともす その手に希望を握りしめて)”
台北で最も歴史のあるお寺として知られる龍山寺は、この歌詞の中にも登場します。
龍山寺については過去記事をご覧くださいね♪
台北最強のパワースポットへ行こう!古き良き台湾を味わえる「龍山寺」と周辺グルメ
“嘉南平原等待收割 是一整片幸福的顏色
(収穫の時を待つ嘉南平原は[4] 一面幸せに満ちた色をしている)
屏東黑鮪魚直接等於快樂 一路蜿蜒的是淡水河
(屏東[6]の黒マグロは幸せを表し 淡水河は延々と流れる[7])“
嘉南平原は、台湾南西部に広がる台湾最大の平原であり、台湾最大の穀倉地帯。歌詞の中の「幸せに満ちた色」とは、稲刈りの時期の稲穂の黄金色を表していると思われます。
出典:http://tw.hiking.biji.co/index.php?q=news&act=info&id=1290
また、この平原にゆかりのある日本人といえば八田与一(八田與一)氏。
八田与一は台湾史上最も尊敬されている日本人と言っても過言ではありません。そんな彼が有名な理由は、この嘉南平原の灌漑事業。八田与一は1910年、台湾総督府の技術者として台湾にやってきます。
その後、もともと河川の数が少なすぎるためにせっかくの大平原にも関わらず穀倉地帯として栄えることができずにいた嘉南平原に、大規模なダムを建設することを提唱し、1930年に烏山頭(うさんとう)ダムを完成させました。八田与一の手がけたダムを有する烏山頭地域には、八田与一の記念館や銅像なども残されています。
出典:http://taiwan.net.tw/m1.aspx?sNo=0019797
台湾の歴史上最も有名な日本人のひとりである八田与一の功績は、日本人として是非知っておきたいポイントです。
台湾といえば、日本と並ぶ漁業大国。また、日本のマグロの主な輸入先に台湾も含まれています。そんな漁業大国台湾の南西部に位置する屏東県には、東港という、世界的にも有名な黒マグロの水揚げ港があるんです。
新鮮な刺身や海鮮料理をいただくことができる市場や屋台が隣接しており、旬が訪れると多くのお客さんで賑わっています。
台湾北部を流れる淡水河。その河口の町であり、かつて貿易港として栄えた淡水は、台湾のベニスとも称され、夕陽が綺麗な観光スポットとして知られています。
台北市の隣の新北市に位置し、台北市内からもMRTで40分ほどとアクセス良好なので、海外からの旅行客でも気軽に足を運べるのも魅力的です。
「情人橋」という夜にはライトアップもされる大きな橋や、LOVEの文字をかたどったオブジェも撮影スポットとして人気を集めています。
“那陡峭的是太魯閣 一派樂天的性格
(あの険しくそびえる太魯閣[7]は 楽天的な性格)
美濃紙傘怎麼折 三義木雕怎麼刻
(美濃[8]の紙傘はどう作るのだろう 三義[9]の木彫りはどう彫るのだろう)
這塊土地上有很多很多的選擇
(この島は自由に満ちている(選択肢がたくさんある))
仔細看著八家將的妝獨特
(八家將[10]の独特なフェイスペイントをよく見てみて)
我說親愛親愛的 我們故事說到這
(私たちの物語はこんなことについて語っているんだ)
台湾東部の花蓮県に位置する大理石の壮大な渓谷で、その美しさ故に国家公園に指定された台湾屈指の自然景観地。
壮大なスケールの太魯閣(タロコ)。台湾の東部といえば、現地では原住民の方なども多くいらっしゃいます。歌詞の中では、大自然の雄大さが楽天的と表現されています。
高雄市内にある美濃は、客家の人々が多く住む町。客家の伝統的な工芸品である、美しい絵柄の描かれた紙傘の産地としても有名です。
出典:http://www.photoeyes.com.tw/?p=777
ちなみに、日本の岐阜県美濃市も、和傘の材料である美濃和紙の生産地。こんなところにも台湾と日本の意外な共通点があるなんて、とっても面白いですよね。
苗栗県にある三義という町もまた、客家の人々が多く住む町。こちらは、日本時代に栄えた木彫り芸術が特産として知られています。
ここには、三義木彫博物館という木彫りの作品を集めた博物館もあり、苗栗県の主要観光スポットのひとつとなっています。
台湾の伝統的な厄払いで、民俗芸能として現在も受け継がれています。「八家將」とは台湾民間信仰の中でも特に重要な神様を護衛する8人の将軍のこと。お祭りの際に、将軍に扮した演者が独特の歩き方で街を練り歩き、災難を払います。
歌詞にもあるように、独特な化粧もポイント。嘉義・台南などの台湾南部で特に盛んな芸能ですが、台北でも、西門や龍山寺や艋舺青山宮などのある萬華地区のお祭り(11月中頃)で見ることができますよ。
“用狂草寫雲門 用蜂炮築一座城
(狂草を表現する雲門舞集[11] 、ロケット花火の光が造る城壁[12])“
雲門舞集は台北の国家戯劇院をはじめ、台湾はもちろん、海外の各地でも公演を行う、台湾のコンテンポラリーダンス集団。国際的な芸術祭へも多数出場を果たすなど、国際的にも高い評価を得ており、雲門舞集の演技は今や台湾を代表する文化となりつつあります。
出典:http://www.epochtimes.com/b5/5/11/18/n1124818.htm
歌詞に登場する「狂草」(狂草は極端にくずした草書を意味します。)という作品の一部を、こちらのYOUTUBEでも見ることができます♪
元宵節である旧暦の1月15日(新暦では2月ごろ)に台南市で行われる、何万発ものロケット花火が放たれるお祭りです。毎年ケガ人が出ることでも有名な、台湾で最も過激なお祭り。
出典:http://readygo.taiwantravelmap.com/?p=3496
火花があまりにも危険なため、参加には完全防備(!)が消防局によって義務付けられています。花火のお供は浴衣やビール、、、ではなくヘルメット。しかし、参加者にとっては、これもまた一興のようです(笑)。2017年は2月11月に開催予定です。参加される皆様、くれぐれもケガや事故には気をつけてくださいね!
“ 媽祖永恆 世世代代的虔誠(永久に変わらぬ媽祖[13] 代々引き継がれる敬虔な姿勢)
天燈冉冉上升 可以許下願望就別等(ランタン[14]がゆっくりと天に昇ってゆく さあ早く願いをかけて)
航海の神様、媽祖。台湾は昔、対岸に位置する福建省や広東省からの漢民族の移民によって開発され、栄えました。大陸からの移民たちは、航海中の安全を媽祖に祈っていたため、航海を無事に終えて台湾へ到着したことは媽祖のおかげであると考えて、媽祖を台湾中に祀りました。
出典:http://tw1000q.tw.tranews.com/
そんな媽祖は今でも台湾で広く信奉され、先ほどご紹介した龍山寺にはもちろん、台湾中の至る所に祀られて親しまれています。
旧暦3月23日は媽祖のお誕生日ということで、毎年3月には台湾各地で「三月瘋媽祖」と言われる、媽祖のお誕生日を祝う盛大なお祭りが行われています。台中にある大甲鎮瀾宮という媽祖を祀るお寺では、9日間かけて台中から台中、彰化、雲林、嘉義までを練り歩く儀式も。
台湾と聞いて、ランタンを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
毎年元宵節(旧暦1月15日、2017年は2月11日)に合わせ、新北市では、夜空に無数のランタンが放たれる平溪天燈節(ランタンフェスティバル)が行われます。
また、台北駅から電車で1時間ほどの十分駅には、お願い事を書いたランタンを飛ばすことができるスポットがあり、毎日国内外からの観光客で賑わっています。
今やランタンそのものが、台湾を代表する観光スポットや光景となっているようです。
以上、本日は台湾のテーマソング「台灣的心跳聲」を通して、台湾の名産や観光スポットをご紹介しました。いかがでしたか?
日本で台湾と言えば、九份や鼎泰豊の小籠包、パイナップルケーキといったものがお馴染みですが、台湾の人の考える台湾の魅力は、また違った視点から思い浮かべられるようです。そうした台湾の文化や歴史が皆さんにもこの曲を通して伝わりますように。
台湾に向かう飛行機の中で、旅先での夕暮れ時に、台湾の人々の優しさに出会ったときに、旅の終わりに、是非ともリピートしていただきたい台湾のテーマソング。台湾旅行が大好きな皆さんはもちろん、まだ台湾を旅したことがない方も、この曲で台湾の新たな魅力を予習しておけば、たくさんの小さな幸せに出会えることは間違いありません!
最後まで読んでいただきありがとうございました♪
参考文献:地球の歩き方編集室 (2016)『地球の歩き方 D10 台湾2015~2016年版』ダイヤモンド社
司馬遼太郎(1997) 『台湾紀行 街道をゆく40』朝日新聞社
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