2019.11.12
いま台湾の若者たちから絶大な人気を誇る女性アーティスト「9m88(ジョウエムパーパー)」。NYでファッションを勉強する傍ら、R&Bシンガーとしての道を志し、帰国後は圧倒的な個性と実力でたちまち話題となった彼女。現在ライブチケットも即完売するほど注目されている「9m88」の、日本での特別インタビューをお届けします。
大家好!編集長の小伶(しゃおりん)です。
台湾の女性シンガーというと、可愛いアイドルグループや本格的なバラードを歌い上げる ”流行歌女王” のような存在を思い浮かべる方も多いはず。そんな中で今台湾の若者たちから絶大な人気を誇っているのが「9m88(ジョウエムパーパー)」という女性アーティスト。
これまでの台湾発の女性アーティストとひと味違う、ソウルフルなR&Bを感じさせられる9m88の音楽スタイルは、ソウルやジャズ、ヒップホップなどからも影響を受けているのだとか。竹内まりやのシティポップの名曲「Plastic Love」のカバーをリリースしたことで、日本でもじわじわと注目されるようになり、2019年にはサマーソニックにも出演していました。
▽ 台湾の人気アーティスト「馬念先」とコラボした『你朝我的方向走來(Walking Towards Me)』
Howto Taiwan編集部でも、彼女の人気ぶりは2018年頃から追いかけていました。
そして「これからぜひもっと日本でも音楽活動を〜!」と願っていたところ、2019年9月に上野恩賜公園にて開催された台湾カルチャーイベント【TAIWAN PLUS】に出演が決まったこともあり(感激!)、今回特別にインタビューの機会をいただきました。
音楽だけではなく、自身のスタイルを貫くファッションや、オシャレなMVもたまらなく魅力的な彼女の素顔に迫ります!
ー まず最初に、音楽アーティストを志したきっかけを教えてください。もともと昔から歌うことが好きだったんですか?
もともと小さい頃からずっと歌手になりたいと思っていて、学校や外部の歌のコンテストがあれば必ず参加していました。だけど、いつも2位とか3位とかで… どうしても優勝だけは獲れなかった。学生の頃はそういったコンテストを通して、レコード会社から契約のお誘いをもらったこともあったけれど、話を進めていくうちに「なんかちょっと違うな」って違和感を抱くことがあって、結局実現はしなかったんです。
そのあと進学した大学は専攻がファッションだったのですが、選択科目でジャズを選ぶことができて。そこで初めてジャズに触れて「こういう音楽の形があるんだ!」っていうのを初めて知って、そこから少しずつ、ソウルやR&Bなどの曲にも触れていった感じです。
ー 当時のレコード会社からのお誘いについて「なんか違うな」って思ったのはどういう面だったんでしょうか?
私はどうしても自分の感性に従って道を決めていきたいっていうこだわりが強かったし、自分のスタイルで自由に活動していきたいと考えていたから。レコード会社が求める、曲のテイストや歌手としてのキャラクター、パッケージ化されたスタイルに縛られるのはちょっと自分には合わないかもしれないな、って想いがあったんですよね。
ー 9m88のパフォーマンスを見ていても、本当に、ご自身の強い意志やスタイルみたいなものをすごく感じます。
そこから大学卒業後、最初は音楽ではなくてファッションの道へ進んだんですよね。ニューヨークのファッション関連会社でインターンをしていたとか。
そうなんです。ファッションの仕事をする傍らで、せっかくだからついでにニューヨークの音楽シーンも見てみたいなと思って現地の音楽学校へ行って。そのときの衝撃が本当に大きかったですね。ファッションの面でも学ぶことは多かったのですが、音楽で受けた衝撃はそれ以上!
インターンを終えて台湾に戻ったあと、やっぱり私はニューヨークで音楽を勉強し直したいと思って渡米しました。4年間あちらの学校に通って、2018年12月に卒業したところです。
ー それだけ大きな影響を受けたニューヨークでの暮らしですが、やっぱり台湾へ戻って活動しようと思ったのはなぜですか?
ニューヨークでの生活が一年ぐらい過ぎた頃に、台湾の人気ヒップホップアーティストのLeo王とコラボした曲をリリースしたんです。YouTubeでMVも発表されてすごく反響も大きくて。私にとっては、きちんとMVもある曲が発表されたのはそれが初めてだったので、なんだかYouTubeでメジャーデビューしたような気分でしたね(笑)。
▽ 【顏社】Leo王 – 陪妳過假日 feat. 9m88 (Official Music Video)
その曲をきっかけに少しずつ台湾のファンができてきたので、ニューヨークの学校に通いながらも、休みの度に台湾に戻ってパフォーマンスするようになっていたんです。
そうやって台湾でファンができてきたことと、4年間のニューヨークでの生活を経て、台湾の家族の近くで過ごす時間も大事にしたいなあという想いが芽生えはじめていたので、台湾に戻って活動することを決意しました。ニューヨークの衝撃は大きかったですが、自分にとっては一つの通過点だと思ってましたから。
ー そもそもLeo王とのコラボも、ご自身でレコード会社にいくつもデモテープを送ったことで実現したんですよね!
海外で働きながらもすごい行動力だなあ… と尊敬しちゃいます。
当時はちょっと焦っている気持ちもあったんだと思います。
音楽も時間もかけて、二度目の大学に通ったのはいいけれど、卒業後に歌手になれる保証なんてどこにもない。自分が積極的にならなければ道は拓けないと思って。なんとしてでも自分の歌を聴いてもらう方法を探してたんです。
ー そういえば… ずっと気になってたのですが「9m88」のアーティスト名の由来はなんですか?
それ、一番よく聞かれる質問です(笑)。台湾では学校で英語を勉強し始めるときに、必ず英語の名前をつけるのですが、そのときに先生がつけてくれたのが「Joaana」という名前だったんです。さらに中学校のときの学籍番号が「88」だったから、当時やり始めたFacebookで「Joanna baba」というアカウント名をつけたのが始まり。
何年後かに自分のアーティスト名が必要になったので「Joanna baba」をもじって、中国語での読みが似ている「9(ジョウ)」という数字を組み合わせて「9m88(ジョウエム バーバー)」という名前をつけました。みんなが見たときに「これラジオのチャンネル名?」「DJの名前?」って、すぐに女性のアーティストって分からないのがいいなと思って。思わずググりたくなるでしょ?(笑)
ー 9m88 といえば、音楽やMV、ファッションなど含めて、80~90年代の影響を強く受けているような印象があります。私たちが聴いていても、懐かしさの中に新しさがあるというか。どういうところに惹かれたのか教えていただけますか?
大学のときに様々なアーティストの曲に触れる中で、よく聴いていたのが80~90年代に流行った曲だったんです。当時の音楽はどれもメロディ、リズム感もすごく特徴的で、デジタルじゃない、リアルなものが多くて。例えば楽器の音にしても、実際の演奏をリアルにレコーディングしていたり、息遣いや演奏もすごく人間味を感じるんですよね。そこにすごく惹かれていました。
デジタルだとどうしても平坦的に聞こえてしまうので、そこまでの立体感は出せないんですよね。そうやって実際の楽器で演奏してレコーディングするのも憧れています。
ー 日本のシティポップの名曲として知られる、竹内まりやの『Plastic Love』のカバーも出されていますよね。
MVでは架空のアイドル・采奈依(さなえ)ちゃんに扮した演出がとても可愛らしかったのですが、あれはご自身のアイデアですか?
あのMVは、監督と話し合いながら作りました。
いつもMVを作るときは、映像の構成を先に考えて曲を作るケースと、すでに完成した曲から表現したい世界観を監督に伝えて映像の方向性を決めていくケースがあるんですが「Plastic Love」の場合は前者でした。こういう架空のアイドルを登場させる映像が作りたいねっていう発想があった上で、曲づくりもしていったんです。
▽ 「9m88」による『Plastic Love(竹内まりや)』のカバー
ー 実際に日本語で歌うのは難しかったですか? 今後も9m88の日本語の曲が聴けるといいな〜と思っているのですが…
すごく難しかったです! 私は中国語、台湾語、英語しかできないので、大きな挑戦でしたね。だけどやっぱり歌手として、耳から入ってくる音を声で表現するということはもともと得意なので、何度も原曲を聴いて、歌詞の意味を教えてもらって、発音も矯正してもらいながら作り上げた感じです。「Plastic Love」の場合は、実際の歌詞の内容が自分の性格にとても合っていたので、すごくマッチしましたね。
まだ決定はしていないですが、日本のアーティストとのコラボレーションの話が進んでいたりするので、日本語の曲に挑戦することは今後あるかもしれないです。
ー わあ!楽しみ! ちなみに、、、毎回アーティストの方にお聞きしているのですが、この記事をきっかけに「9m88」を知る方に、一曲オススメするとしたらどの曲ですか?
うーん、やっぱり最新アルバムの「平庸之上 Beyond Mediocrity」ですね。この一年の中の自分の気持ちを表した曲でもあるし、何よりもR&Bやソウル、ジャズなど自分の好きな要素が全部詰まっているので!
ー 9m88 の音楽やステージを見ていて思うのは、音楽スタイルはもちろん、その明るく我道を行くようなキャラクターが本当に魅力的!!!ということです。そんな風にブレずに自分のスタイルを貫けるのはなぜなんでしょうか?
そう言ってもらえて嬉しい! やっぱりニューヨークで受けた影響が大きかったんだと思います。現地ではみんな自分を表現するのがとっても得意だったし、そうしないと生き残っていけない世界だったから。
あともうひとつは、インターネットの普及もあるのかも。SNSを通して、自分を表現している人を探すことができて、音楽やアート、ジャンルに関わらずフォローすることができる。私自身もそうやって自分を表現したり個人のスタイルを持っている人にとても惹かれるので、そういう人たちから学ぶことは多いですね。
▽【TAIWAN PLUS】ステージでの一コマ。アニマル柄の全身スーツがカッコいい!
集まった観客を音楽で魅了し、さらにパフォーマンス終了後も、ファンの方とステージ下で写真を撮ったりとフレンドリーな姿が見られました。
ー ちなみに、日本のアーティストでそんな風に自分のスタイルを持っているなあと思う人はいますか?
うーん、水曜日のカンパネラのコムアイちゃんとか!
ー そうだ!instagram見ました。一緒に居酒屋で飲んでましたよね!
そうそう。もともとお互いの instagram をフォローしていて、共通の友達がいたこともあって仲良くなりました。彼女も自分を突破する力がありますよね。ステージ上でも即興のパフォーマンスに挑戦したり、ファッションでも色々なスタイルを試していたり、すごくオープンマインドで自分の限界に挑戦しているなあって…。
ー そういうアーティストの存在がまた、ご自身の個性を貫く力になっているんですね。
ー 最後に、おすすめの台湾情報についても教えてください。台湾でお休みのときは何をしていることが多いですか? 普段からよく行くお気に入りの店やスポットがあれば教えてください!
CDやレコードを買いに行ったり、音楽を聴いたり、家のお掃除したり… あと挑戦しているのは料理! まだあまり上手じゃないけど(笑)。あと最近行った場所では、古亭駅にある「Nom Nom」というカフェも素敵だったなあ〜。
ー 「Nom Nom」、ぜひ行ってみます!
ちなみにディープな台湾好きである「Howto Taiwan」の読者の方にオススメしたい観光スポットはありますか?
え〜!なんだろう! きっと一般的なガイドには載っていないようなところがいいんですよね?
台湾の北海岸とかどうだろう。台北からはちょっと距離はあるけど、美味しい海鮮が食べられるし、近隣にちょっと変わったお寺もあって。
せっかく行くなら「十八王公廟」はぜひ見てきて!めちゃくちゃ巨大な犬が祀られてて、他にはないちょっと変わったお寺だから、見に行くには面白いかも(笑)。
▽ 実際に調べてみたら、犬、めっちゃ大きかった!(笑)
ー 今後の日本での活動で、予定されているものはありますか?
現時点で決まっているライブの予定は今のところないのですが、今年8月に台湾でリリースされたアルバム「平庸之上 Beyond Mediocrity」の日本デビュー盤アルバムが10月末にリリースされました! ぜひ皆さんに聴いていただけたら嬉しいです。
日本盤には、台湾で発売されたものには収録されていないボーナストラックも一曲も入っています。日本のライターさんによる日本語解説も入っているので、このアルバムをきっかけに初めて 9m88 に出会ってくれる方たちからの反応も楽しみです。
> 日本盤はこちらからチェック! http://p-vine.jp/music/pcd-24877
ー 日本のTower Record バイヤーの11月度のプッシュアーティスト「タワレコメン」にも選ばれていましたよね!
これからますます日本で注目されるようになればいいな〜! 本日はありがとうございました♡
「9m88」のライブ情報やリリース情報など、最新のニュースをチェックしたい! という方は、ぜひオフィシャルSNSなどもフォローしてくださいね!中国語/英語での情報発信を行っています♪ 台湾各地で行われるイベントなどで、無料のライブを行っていることもあるので要チェックですよ〜〜!
Facebook https://www.facebook.com/9m88baba/
instagram https://www.instagram.com/9m88/
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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