2025.10.31
今年2月に台湾で公開された、90年代の台北を舞台にした青春映画『ひとつの机、ふたつの制服』が、2025年10月31日(金)より日本で公開されます。公開を記念して、Howto Taiwanでは荘景燊(ジュアン・ジンシェン)監督にインタビューを実施! キャスティング&撮影の裏話や、作品のテーマでもある “コンプレックス” に関するエピソードなどーー。本作に興味のある方はぜひご覧ください!

2024年の第29回釜山国際映画祭や第61回台北金馬映画祭で話題を呼んだ、台湾発の青春映画『ひとつの机、ふたつの制服』(原題:夜校女生)が、2025年10月31日(金)より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺、シネ・リーブル池袋ほか、全国の劇場で順次公開されます。上映館は随時増えているので、最新状況はぜひ、公式サイトの劇場ページをご覧ください!

強引な母の勧めで名門女子校の”夜間部”に行くことになった主人公の小愛(シャオアイ)と、同じ机を違う時間帯に使う ”机友(きゆう)” となった、全日制の成績優秀な敏敏(ミンミン)の二人の物語。友情はもちろん、恋愛、家族との関係、進路などーー。
大人にとっては懐かしく、そして若者にとってはちょっぴり痛い、青春コンプレックス・エンタテインメント! 『あの頃、君を追いかけた』(2011)や『赤い糸 輪廻のひみつ』などで知られる大ヒットメーカー、ギデンズ・コーが大絶賛していたり、劇中では「五月天 Mayday」の超名曲! 『擁抱』が使われていたりと、台湾好きとしてもゼッタイに見逃せない作品!
というわけで、日本での公開を記念して、Howto Taiwanでは、監督をつとめた荘景燊(ジュアン・ジンシェン)さんにインタビューをさせていただきました! 製作の裏話や、監督ご自身の青春時代、さらにおすすめのロケ地などなど……! 気になるお話を、たくさん伺ってきましたよ〜!
本作に興味のある方/すでにご覧になった方はぜひ! 最後までご覧くださいね。

※ インタビュー内に、映画の内容に触れている箇所があります!ネタバレしたくない方はご注意ください
ー 本作は、監督と、脚本家の徐慧芳(シュー・フイファン)さん、そして監督の奥様であり、同じく脚本家である王莉雯(ワン・リーウェン)さんの3人で手掛けられた作品ですよね。本作の監督を務めることになったきっかけについて教えてください。
実は脚本家の徐慧芳さんは、私の妻の友人でもあるんです。徐さんは台北の夜間学校の卒業生でもあって、自身の経験を元に「夜校女生(原作タイトル)」という脚本を書いたんですね。脚本を見た妻はこのストーリーをとても気に入って、私にもすぐに読むように勧めました。そして「こんなに良い脚本はなかなかないから、この機会を逃さないでほしい」と。
妻は女子校出身、私自身は男子校出身で、当時の台湾の高校生が直面していた受験の重圧や、家庭からのプレッシャーは、多くの人たちが感じてきたことでした。
そうした背景もあって、この脚本に強く惹かれ、妻と一緒にプロデューサーや投資家を探すことにしました。そしてプロデューサーの唐在揚(デビッド・タン)さんに出会い、彼も本作をすごく気に入って、積極的に支援してくれることになりました。
おそらく、フィフティフィフティといったところでしょうか。
一部は徐惠芳さん自身の経験で、一部は彼女が夜校の同級生や卒業生から聞いた話だそうです。彼女は自分の経験と他の人の経験を融合させて、半自伝的な脚本を作り上げたのだと思います。
ー 日本人にとって同じ机をシェアする「机友(きゆう)」というのは、あまり馴染みがなく、なんだかロマンチックに感じました。台湾の青春時代ならではの概念ですよね。
そうですね。 ”桌友(同じ机をともにする友人)” というのは、かつての台湾で、昼に学校に通う「日校」と、夜間に通う「夜校」の制度があったからこそ生まれたものです。
日校生と夜校生が同じ机を使い、お互いに手紙を書いてコミュニケーションを取ったりする機会があったんですね。現代では手書きの文字を書く機会も少なくなっていますから、そういった方法で感情を伝えることは特に貴重だと思います。私自身、とても心に響く交流の形だなと感じていました。

ー 本作に登場する小愛、敏敏、そして彼女たちが想いを馳せる路克ーー それぞれのキャラクターの個性が際立っていて、魅力的だと感じました。キャスティングの裏話があれば教えてください。
私がキャスティングで最初に設けた条件は、できるだけ登場人物に近い年齢の役者に出演してもらうことでした。台湾の映画では、よく実際の役柄の年齢よりも年上の俳優が演じることがありますが、それは見た目の問題だけでなく、俳優自身の心理状態にも関係します。すでに「大人」になっている人は、高校生の純粋な状態に戻るのが難しいだろうと。
そこで、年齢で最初のフィルターをかけたのですが、実はこの条件はかなり厳しいものだったんです。というのも、台湾では、この年代で活躍する俳優の数がそもそも多くないんですよ。
しかし幸運にも、小愛役の陳妍霏(チェン・イェンフェイ)、そして敏敏役の項婕如(シャン・ジエルー)という二人の俳優に出会えました。彼女たちは自分自身を完全に役に投入してくれて、本当に高校生のように見えましたね。路克役の邱以太(チウ・イータイ)は20代ですが、昔の高校生のような素朴さがありました。この3人の俳優に出会えたことは、本当に幸運でしたね。

ー 3人がそれぞれの役に入り込むために、工夫したことはありますか?
撮影前に約一週間ほど、3人と過ごす時間を設けました。私は、敏敏を演じた項婕如とは仕事をしたことがあったのですが、小愛を演じた陳妍霏と、邱以太とは初めての仕事でした。撮影前の準備期間を通じて、私も彼らの演技の能力をより理解することができました。みんながある程度、お互いのことを知り、良い友好関係を築くことができたので、本番の撮影ではあまり大きな問題はなかったですね。

ー 撮影において特に大変だったシーンや印象に残っているシーンはありますか?
小愛役の陳妍霏にとっては、すべてのシーンが簡単ではなかったと思います。この映画はほとんどの時間、小愛に焦点を当てていますから。
撮影では必ずしもストーリー順に撮影するわけではないので、彼女の感情の流れも、頭から順番に演じるわけではありません。そんな複雑な撮影過程の中で、彼女は各シーンでの小愛の感情状態をしっかりと把握していました。彼女はとてもプロフェッショナルな俳優です。
最も難しかったのは、路克の母親の展示会が行われているギャラリーに小愛が行くシーンですね。あのシーンでは、彼女が普段の自分の生活圏ではない場所に行き、躊躇しながら中に入ります。別世界のような空間で、最初は自信がない様子なのですが、大人たちとの会話の中で、「夜間学校も悪くない」「そこにも素晴らしい人がいる」と証明したいような気持ちになるんです。最終的に、そこで彼女は恥ずかしい思いをすることになりますが、このシーンではあまりにも多くの異なる感情の層を表現しなければならず、彼女にとっては非常に難しいシーンになったと思います。

ー 本作は90年代の台北が舞台になっていますが、当時のカルチャーやファッション、町並みなどを表現するうえで、大変だったことはありますか?
特に考慮したのは、できるだけ屋外でのロケをしないことかな(笑)。
現在の台北の風景は90年代とは全く異なりますし、製作予算も厳密にコントロールする必要があったので……。
いくつかの屋外シーンを撮影する際は、台北で当時の雰囲気が残っている場所を探しました。例えば、映画を見たあとに西門町の通りで雨宿りして話すシーンの場所は、当時とあまり変わっていない場所です。また、昔の面影をそのまま残した日本家屋があった場所があったので、そこにバス停を設置して撮影したりーー。
あとはやっぱり、当時みんなが大好きだった五月天の楽曲や、ラッキーアイテムとして流行した凱西(キャシー)のキーホルダー、あとは日本の「スラムダンク」や「ビーチボーイズ」など、90年代にみんなが夢中になったブームの要素をたくさん取り入れました。さらに当時の社会状況をセリフに織り込むことで、90年代の雰囲気を演出しています。
ー ロケ地といえば、Howto Taiwan読者の中には、ロケ地めぐりが好きな方も多いんです。もし良ければ、本作に登場する場所の中で、監督のおすすめのロケ地があれば教えてください!
おすすめは、沢山のシーンを撮影した「西門町」ですね! 印象的な雨のシーンや、彼らがドリンクを飲んでいた店は西門駅です。あと、彼らが通っていた塾も南陽街あたりにあって、西門からそう遠くない場所にあります。
西門町は台北の若者たちにとってのランドマークで、様々な国の文化要素が融合している場所です。休日だけでなく平日も非常に賑わっているので、ぜひ皆さんに遊びに来てもらいたいですね。

ー それでは最後に、本作で描いた若者の感情についても伺いたいです。作品では若者の自己価値に対する葛藤が描かれていますが、監督自身は学生の頃、そういったコンプレックスを感じたことはありますか?
若い頃は、誰でも多かれ少なかれ心の中に奇妙な考えを持つものだと思います。
私の場合は、まわりの人と違うことや、周囲の人たちの家庭環境と自分の家庭環境は違う、あるいは他の人より劣っている、と感じることに居心地の悪さを感じていました。私が高校生の頃、最も嫌だったのは「あなたの親はなんの仕事?」というような話題でしたね。友人の中には、親が医者や教師という人がいて、そういう家庭はより優れている、という印象がありました。
もちろん、大人になってから、特に映画製作の仕事を始めてからは違う視点を持つようになりました。初期には多くのドキュメンタリーを撮影し、台湾の様々な背景を持つ人々を見てきました。そして深く感じたのは、高校生の頃の自分はとても幼稚だったということです。
当時、私の両親は私に幸せな環境を与えてくれていました。少なくとも勉強に集中させてくれて、家計の心配をさせませんでした。過去に手掛けてきたドキュメンタリー撮影を通じて多くの人々が実際には非常に苦労して生きていることを知りました。彼らは必ずしも苦しんでいるわけではないし、幸せかもしれません。それでも彼らの生活は大変です。
そう考えると、あの頃の私が抱いていた不満はなんだったのかーー。大人になると視点が変わりますよね。
ー 本作では特にティーンエイジャーの女子の感情が渦巻くシーンがたくさんありますが、この気持ちを理解するために、まわりの人たちと意見を交換したり、議論したりすることはありましたか?
はい、かなり話し合いました。脚本家の二人は女性ですし、妻も脚本家の一人です。一緒に仕事をしていますし、自分の妻なので、コミュニケーションは容易でした。女性の問題やテーマ、女性の気持ちについては、映画の中で彼女が話す一つ一つのセリフの論理に反映させています。男性と女性では言い方が違うこともあります。
例えば、飲み物店でインターネットが家にあるかどうか話し合うシーンで、小愛は負けず嫌いでニコール・キッドマンという有名人の名前を出し、英語で手紙を書いていると言います。当時、英語で手紙を書くというのはすごいことで、英語力の高さを示していました。
これは女性同士の間で、特に自分が想いを寄せる素敵な男の子の前で、自分も何かできることを示したいという小さな心理戦です。このような小さな駆け引きは、当時の女の子たちがお互いを比較し合うような感覚によく似ていますよね。
男の子の場合だと、ちょっと方法が違いますよね。「よし、3対3のバスケで対決だ!」みたいな(笑)。もっと分かりやすい勝負になるでしょうし、男の子と女の子では大きな違いがあるなと感じましたね。

ー 監督にとって、“若者を描く” ということにはどんな意味があるのでしょうか?
私の成長過程は、小愛や路克、敏敏たちとかなり似ていると思います。いわゆる良い学校で、おとなしく勉強するだけで、他にすることもなく、親も勉強以外のことをさせませんでした。私の高校生活は、いま思えば非常に退屈なものでした(笑)。恋愛もしていなかったし、課外活動もしていなかったし……。そうしたこともあって、大人になって若者たちの映画を撮る際は、私は自分とは異なるタイプの若者たちの生活を覗いてみたいと思ったんです。
彼らの過去や家庭背景を知ることは、私にとっては非常に意味深いことです。映画を撮影することを通じて、私が過ごしてみたかった、若者たちの青春を表現してみたいと思っているのかもしれません。
ー なるほど。今後の作品でも、異なる若者の物語を撮る可能性はありますか?
もちろん可能性はありますよ! 出会う題材や脚本によって異なりますが、いま計画しているのは、若者の恋愛物語です。楽しみにしていてくださいね。
ー 最後に、本作を観たいと思っている日本の観客に向けて、メッセージをいただけると嬉しいです!
改めまして、日本の観客の皆さん、こんにちは! 「ひとつの机、ふたつの制服」の監督、荘景燊です。この作品は、台湾の90年代の若者の物語ですが、作品に描かれている学生たちが直面する家族との関係、愛情、友情は、きっと日本の観客の皆さんにも共感していただけるものだと感じています。
日本の観客の皆さんにもぜひ「ひとつの机、ふたつの制服」を楽しんでいただければ嬉しいです。そしてもし気に入っていただけたら、ぜひ宣伝して、盛り上げてくださいね! よろしくどうぞ!

映画の始まりは1997年。受験に失敗し、強引な母の勧めで名門女子校の”夜間部”に行くことになった主人公・小愛(シャオアイ)は、全日制の成績優秀な敏敏(ミンミン)と同じ机を使うことになる。ふたりは “机友(きゆう)”になり、敏敏が提案した制服交換から行動をともにするようになるが、やがて同じ男子校生・路克(ルー・クー)を想っていることに気づき……。
主人公・小愛を演じるのは、『無聲 The Silent Forest』(20)で第 57 回金馬奨最優秀新人俳優賞を受賞し、Netflix 主演作も控 える注目の若手女優、チェン・イェンフェイ。彼女と “机友”になる敏敏役には、『愛という名の悪夢』(24)で第 26 回台北映 画祭の主演女優賞にノミネートされたシャン・ジエルー。そして、ふたりが恋する男子校生役を『台北アフタースクール』 (23)のチウ・イータイが演じています。監督は、『High Flash 引火点』(18)『よい子の殺人犯』(19)などの人気監督ジュ アン・ジンシェンで、過去にアン・リーやチェン・ユーシュンといった名だたる映画人も受賞した台湾最大の脚本コンペティショ ン「優良電影劇本奨」(台北金馬映画祭実行委員会運営)で特別優秀脚本賞を受賞したシナリオを見事に映画化しました。大人に は懐かしく、若者にはちょっぴり痛い、青春コンプレックス・エンタテインメントがここに誕生!
監督:ジュアン・ジンシェン(荘景燊)
脚本:シュー・フイファン(徐慧芳)、ワン・リーウェン(王莉雯)
出演:チェン・イェンフェイ(陳妍霏)、シャン・ジエルー(項婕如)、チウ・イータイ(邱以太)
原題:夜校女生|英語題:The Uniform|2024|台湾|5.1ch|2:1|カラー|中国語|109分
Renaissance Films Limited ©️2024 All Rights Reserved.
提供:マクザム 配給:ムヴィオラ、マクザム 後援:台北駐日経済文化代表処台湾文化センター
・公式サイト:https://www.maxam.jp/hitofuta/
・公式X https://x.com/hitofuta_eiga
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