2024.7.2
台湾南部の鉄道路線「南廻線」を支える鉄道員とその家族、そして同線を愛する人々の想いを記録した台湾初の鉄道文化ドキュメンタリー作品『郷愁鉄路~台湾、こころの旅~』が、2024年7月5日(金)より新宿武蔵野館にて公開決定! 公開を記念して、蕭菊貞監督のインタビューをお届けします。
台湾南部の鉄道路線「南廻線」。「南廻線」を支える鉄道員とその家族、そして同線を愛する人々の想いを記録した台湾初の鉄道文化ドキュメンタリー作品『郷愁鉄路~台湾、こころの旅~』が、2024年7月5日(金)より新宿武蔵野館にて公開されます!
「南廻線」は、パイナップル畑や線路の近くまで迫る海など大自然の中をSLやディーゼル列車がのんびりと走り抜ける旅情豊かな路線でしたが、2020年に全線で電化され、その模様は変化を遂げました。台湾でドキュメンタリー監督として活躍する蕭菊貞(シャオ・ジュイジェン)監督が4年の歳月をかけ、失われていく沿線の原風景と鉄路をカメラにおさめたのが本作品。鉄道員やその家族、「南廻線」を愛する人々の想いを記録として残しています。
さぁ、郷愁鉄路を走る列車で、あなたもこころの旅に出ませんか――。
7月5日(金)新宿武蔵野館での劇場公開に先駆けて、本作品を実際に鑑賞させていただいた上で、蕭菊貞(シャオ・ジュイジェン)監督にメールインタビューを行いました。とても丁寧に答えてくださり、この映画に込めた想いにも触れることができました。本作をより深く楽しみたい! という皆さん、ぜひご覧ください。
ー これまで数々のドキュメンタリー作品を手掛けてこられた蕭菊貞監督ですが、今回台湾鉄道をテーマにした作品を撮ろうと思ったきっかけについて教えてください。
長年ドキュメンタリーを撮り続けてきて、ドキュメンタリーは “芸術” であるだけでなく、 “文化を描く” という意義があると考えるようになりました。ですから、私はドキュメンタリーを台湾の文化や歴史の重要な記録を残すために役立てたいと思っています。
そうした中で、鉄道を通して台湾を読み解くのは、とても良い入り口だと感じたんです。台湾の鉄道は非常に密度が高く、日本統治時代に礎が築かれたため、多くの集落は鉄道沿線を中心に発展してきました。地方の庶民の生活を理解し、文化を観察する上でも良いテーマだな、と。そうした想いで『郷愁鉄路~台湾、こころの旅~』を撮ることを決めました。
ー 本作は、鉄道員の方々の台湾鉄道への熱い情熱を感じる作品でした。監督から見て、特に印象に残った人はいますか?
実は、この映画に登場する鉄道員の方々の姿に心を打たれ、もともと2年の予定だった撮影は、5年がかりになりました。
最も印象に残っているのは、若い運転士の黃鈺清(ホアン・ユーチン)さんですね。
当初彼と出会ったときは、彼は運転士になるために一生懸命に努力をしているところで、その姿に感動させられました。幼い頃から祖母に連れられて鉄道を見て育ち、運転士になることをずっと志していたんです。卒業後、運転士として鉄道局に入局するためには、3回連続で試験に合格しなければなりません。一人の運転士の試験過程を映像に記録する貴重なチャンスを得たと感じましたが、私たちの撮影が彼の重要な試験を邪魔してしまったらどうしよう、と。すごく心配しました。幸い彼は試験に合格して、ほっとしました。
しかし、最も驚いたのは、その彼が撮影終了の直前に、台湾の全国運転士コンテストで優勝を果たしたことです。その知らせを聞いたときは本当に嬉しかったし、ドキュメンタリーの時間の流れを、見事に証明してくれたような気がしました。
ー 若い方が台湾鉄道の分野で活躍されている姿は、私にとっても非常に印象的でした。
制作にあたって苦労されたことなど、今だから話せる裏話があれば教えてください。
撮影で大変だったことは沢山あります。まず一点目は、鉄道は動きの速い大型の乗り物なので、人物を撮影するドキュメンタリーとは異なる撮影の段取りが多く、非常に難易度が高かったです。結果的に、通常よりも多くのカメラクルーを動員することになりました。
二点目は、南廻線の大部分は高山地帯にあり、周囲に道路網がないため、撮影が非常に難しかったこと。空撮に頼らざるを得ないカットが多かったのですが、高山地帯でありながらも線路をたどる必要があるため、空中信号がたびたび障害を受けることがありました。何度もトライして良いカットを完成させなければならなかったのが大変でしたね。
そして三点目は、鉄道現場での撮影許可を得ること。公共の安全を考えなければいけないこと、また鉄道員の皆さんが、南廻線について良いストーリーを語れる自信がありませんでした。そのため早い段階から、彼らとのコミュニケーションに注力する必要がありました。
ー 本当に、多くの苦労を経て完成した作品なのですね。
日本にも廃線などで失われる鉄道の風景がたくさんあるので、この “郷愁” は多くの日本人が共感できるテーマだと感じています。この作品が日本で公開されるにあたって、監督自身、なにか特別な想いがあれば教えてください
日本で上映されることがとても嬉しいです。台湾の鉄道は日本と深いつながりがあり、鉄道員のマネジメントや鉄道文化など、台湾と日本の間には情緒的な共鳴が多いんです。だからこそ、日本で配給・上映できることは本当に意義深いことだと感じています。
古い鉄道や古い電車が消えていくのは、世界の急速な発展の中で避けられないプロセスのように思えます。情緒的、文化的な保存を掲げても、消えていくこと自体を避けることは不可能です。 しかし、ドキュメンタリー映画による映像の保存は、そうしたノスタルジーを記録するのにとても良い形だと思っています。仮にすべてが変わってしまったとしても、かつて存在したこの場所の物語や姿を、未来の若い人たちに知ってもらうことができますから。
ー では最後の質問です。本作を見た人の中には「台湾にも熱烈な “鉄オタ” と呼ばれる人がいるんだ!」と驚く方もいるのではないかと思いました。監督は撮影を通して、たくさんの鉄道ファンたちと触れ合ってきたと思いますが、なにか印象に残っていることはありますか?
”鉄オタ” と呼ばれる方たちは本当にかわいいんですよ! 彼らの鉄道に対する愛情と情熱は想像以上で、撮影中もたくさん助けてもらったし、彼らのおかげで多くのロケ地に行くことができました。また撮影の過程では、日本、韓国、香港、イギリスなど、さまざまな国の鉄道ファンにもたくさん出会いました。古い列車の中で意見を交換したり、食べ物を分け合ったりするのはとてもいい経験でしたね。
素敵なお話をたくさんありがとうございました!
台湾で親しまれてきた南廻線や鉄道員の方たちの姿が、日本の大きなスクリーンで映し出されるのが今から楽しみです。
『郷愁鉄路~台湾、こころの旅~』公式サイト https://on-the-train-movie.musashino-k.jp/
公式Xアカウント @onthetrain_sll
<7月5日(金) 新宿武蔵野館ほか全国順次公開>
監督:シャオ・ジュイジェン(蕭菊貞)
プロデューサー:チェン・ボーウェン(陳博文)、シェン・イーイン(沈邑頴)
音楽:チェン・ミンジャン(陳明章/陳明章音楽工作有限公司)/シェ・ユンヤー(謝韻雅/MIA)
編集:チェン・ボーウェン(陳博文)/チェン・ユーツォン(陳昱璁)
音響:ドゥ・ドゥーチー(杜篤之)/シェ・チンジュン(謝青㚬)
製作:Pineal Culture Studio(上善醫文化工作室)
2023年/台湾/106分/DCP/原題:南方、寂寞鐵道/英題:On The Train
日本語字幕:樋口裕子/翻訳協力:小田急電鉄株式会社/G
配給:武蔵野エンタテインメント
©Pineal Culture Studio
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