2025.12.3
2025年10月27日〜11月5日まで、東京・日比谷で開催された第38回東京国際映画祭。ワールドフォーカス部門では、「台湾電影ルネッサンス2025 ~台湾社会の中の多様性」と題して4本の台湾映画が上映されたほか、「アジアの未来」部門では台湾を舞台にした日本映画もありました。上映後Q&Aの様子も交えながら、映画祭にて上映された5作品をご紹介します。
こんにちは、ゲストキュレーターの真真(ジェンジェン)です!
2025年10月27日〜11月5日まで、東京・日比谷で開催された第38回東京国際映画祭。
ワールドフォーカス部門では、「台湾電影ルネッサンス2025 ~台湾社会の中の多様性」と題して4本の台湾映画が上映されたほか、「アジアの未来」部門では台湾を舞台にした日本映画もありました。映画を通して見える台湾社会の多様性とは? 多数のキャストやスタッフが来日した上映後Q&Aの様子もちょっとずつお伝えします。
原題:樹冠羞避/英題:Crown Shyness

普年(プーニエン)の母リンは長年中国で働いていたが、台湾に帰ってくると癌で余命僅かなことが判明する。普年の祖母ハオは、普年がタイ人女性パートナーのザイザイと暮らしている家に半ば強制的にやってくる。ぎくしゃくした暮らしの中で、お互いが距離感を測りながら心を通わせていく様子を表しているのがタイトル“樹冠羞避(Crown Shyness) ”。 直訳すると「樹冠が遠慮し合っている」という意味で、木々がお互いに最大限の日光を浴びられるように配慮し合っている様子を示す言葉だそう。
タイトルに込めた意味を聞かれ、張均瑜(チャン・ジュンユー)監督は「さまざまな異なる文化、異なる場所から来ていても共通するものもあるのではないか、そうした異なるものと同じものの関係が、お互いに寄り添うようで離れている樹木の姿に象徴されていると感じた」と話しました。
金鐘奨でテレビ映画賞を受賞したこの作品は台中出身の張監督の初長編。短編『未命名(原題)』(’19)ではフェミニンな名前を改名したい女性を主人公に据え、今作では女性のカップルが支え合いながらも逃れがたい苦難と直面する様子を静かなトーンで描きました。多様性を反映した人物設定のほか、この作品の台湾らしさといえば昔ながらのエビの釣り堀。普年の勤め先であり、登場人物たちが腹を割って話すシーンで使われます。

原題:丟包阿公到我家/英題:April

屏東で台湾人の老人・阿公(アーゴン)の在宅介護をしているフィリピンからの出稼ぎ労働者エイプリル。故郷に残した母親が余命わずかとの知らせを受け休暇を願い出るも、雇い主である阿公の長男と長女は難色を示し、仕方なく阿公を連れてフィリピンに戻ることにする。一方刑務所から釈放されたばかりの阿公の息子・阿偉(アーウェイ)が帰宅すると家は空っぽで…。
台湾の「金鐘獎(きんしょうしょう)」で7冠を獲得した前作の大ヒットTVシリーズ『八尺門的辯護人(原題/英題:Port of Lies/原作邦題:台北裁判)』(’23)で移民労働者を登場させた監督・脚本の唐福睿(フレディ・タン)は、「そのような立場の人が国に帰った時の物語を描きたかった」と語ります。弁護士から映画監督・小説家に転身した異例の経歴を持つ彼は、長編デビュー作『童話・世界』(22)では性暴力事件、『八尺門的辯護人』では移民労働者が起こした殺人事件と、いずれも担当弁護士を主人公にした作品を作ってきました。
これまでと同じく社会が抱える問題を浮き彫りにしながらも、法律をメインにはせず、全体を通して南国のどこかのんびりした時間が流れる本作。原案を鍾孟宏(チョン・モンホン、『ひとつの太陽』『瀑布』)が手がけ、林生祥(生祥楽隊)が音楽を担当しているのがいっそう台湾映画らしさを感じられる要因かもしれません。台湾華語と客家語、フィリピン語、英語が飛び交い、移民のエイプリルも阿公と会話するために客家語を覚えているのが印象的です。

原題:人生海海/英題:The Waves Will Carry Us

台湾で働く阿耀(アーヤオ)は、父の葬儀のためにマレーシアに戻る。ところが密かにイスラム教に改宗していた父の遺体は、イスラム教の墓地に埋葬されなければならないと主張する宗教警察に奪われてしまう。台湾で移民として扱われてきた阿耀は、マレーシアでも多文化国家の中でアイデンティティや家族関係と向き合うことになる。
台湾をベースに活動しているマレーシア出身のラウ・ケクフアット監督は、移民や歴史をテーマに多数のドキュメンタリーも作ってきた各種映画祭の常連です。フィクション2作目となる今作では、先日11月22日に発表された第62回金馬獎で阿耀の姉妹役の陳雪甄(ヴェラ・チェン)が助演女優賞を獲得しました。
「今の政策の状況と私たちとの関係をしっかりと目を開けて見てほしい」とマレーシアの人たちに伝えたいというラウ監督。民族間の対立も扱っている挑戦的な内容のため、マレーシアでの上映は検閲に引っかかる可能性もあるそうです。「ただやはり、フィルムメーカーならこういった難しいトピックこそ取り上げるべきだと考えています。たとえそれが壁に石を投げつけるような行為であったとしても、映画を作ること、また観てもらうことで、壁に負けないぞという石を投げているつもりです」と力強く語ります。彼の立場だからこそ説得力を持って語ることのできる海を越えた物語は、台湾映画の可能性を拡げているのではないでしょうか。

原題:雙囍/英題:Double Happiness

5つ星ホテルで料理長を務める高庭生(ガオ・ティンション)は、香港出身の婚約者・吳黛玲(ウー・ダイリン)との結婚式当日を迎える。しかし執り行う結婚式は、実は同時にふたつ。庭生の離婚した両親が、同席を拒んだのだ。ふたりにバレないように、庭生は同じホテル内で同僚の協力を得ながらなんとか一日を乗り切ろうとするが…。
本作の見どころは、なんといっても舞台となった圓山大飯店。宿泊したり見学したりしたことのある人には見覚えのある、あの赤いカーペットの階段や凝った意匠、秘密の地下トンネルまで、建物の特徴的な部分が余す所なく登場します。
台湾や香港独特の結婚式の慣習も興味深いものの、主人公のトラウマの根源である結婚制度自体や家父長制への批評的な目線はほとんどないのが辛いところ。台湾のまだまだ保守的な側面を感じさせる作品でもあります。

英題:Kiiroiko

父親との台北旅行中に寧夏夜市付近で迷子になってしまった日本人のろう児。日本手話が理解できる台湾人ろう者のチェンと偶然出会い、チェンはろう児を台湾ろう協会に連れて行くが、ろう児はチェンと離れたがらず…。
「アジアの未来」部門で上映されたこちらの作品は、台湾を主な舞台とした日本映画。台湾には日本統治時代の影響で日本手話が理解できる高齢者がいることを物語に活かし、俳優・制作陣の大半を台湾と日本のろう者が担った画期的な一本です。ろう児とチェン、協会の職員たちとのコミュニケーションと、子どもを探すろう者の父親が異国の人々や日本の仲間に助けを求める様子を通して、二国間のろう者を含む人との間にはさまざまな異なる言語が介在すること、それに伴う苦労や発見を浮かび上がらせます。
チェン役の顧玉山(グー・ユーシャン)によると、今の若い人たちが使っている台湾手話も40%ぐらいが日本手話に似ているとのこと。例えば、父、母、兄、弟といった言葉は、同じものが使われているそうです。日本から台湾に行ってろう者と交流する人や、逆に台湾からも日本に来て交流する人が増えているのだとか。

以上、第38回東京国際映画祭で上映された台湾関連映画でした。
まだ日本国内での公開が発表されている作品はありませんが、再び映画館でお披露目される日は遠くないかもしれません。より多くの皆さんの感想にふれる機会を楽しみにしています!
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