2019.1.6
こんにちは!キュレーターのれいちぇるです。 ノスタルジックな雰囲気が漂う台湾鉄道・苗栗(ミャオリー/miáolì)駅。この地域といえば、もともと多くの客家(はっか)人たちが移り住み集落をつくっていたことで、今なおその文化が色濃く残っています。
そんなローカルタウンで旅人たちに長年愛されてきた民宿、「新興大旅社」。苗栗の街歩きとともにぜひ堪能していただきたい、客家文化に触れられる宿泊体験をご紹介します♪
台北から台湾新幹線(高鐵)に乗り苗栗駅へ、そこからローカル線の台湾鉄道に乗り換えて一駅行くと、台湾鉄道(臺鐵)の苗栗駅に到着します。駅のホームに降り立った瞬間から、ゆったりとした時が流れるのを感じられる苗栗駅には、ノスタルジーな雰囲気が漂う旧駅舎の隣に、新駅舎が並んでいます。
客家文化を代表する桐の花のモチーフが可愛い〜!
今回ご紹介するお宿「新興大旅社」は、この駅から徒歩2分。どこか昭和の下町を彷彿とさせる通りを曲がると青い看板が見えてきました。
玄関からすでにレトロな雰囲気が満載♡ 向かって左側が旅館のロビー、右側は併設のカフェとなっています。
さぁ、早速ドアを開けておじゃましてみましょう~。
こちらのロビーでニーハオ!と笑顔で出迎えてくれたのは、当旅館2代目オーナー夫妻の奥様。羅媽媽(ルォマーマ)という愛称で親しまれている、とっても明るく優しい女将さんです。
そんな新興大旅社の歴史は古く、1950年に遡ります。
もともと初代オーナーは雑貨店を営んでいたそうですが、苗栗駅のすぐそばという立地で行商が多く立ち寄る場所だったにもかかわらず、付近には宿泊できる宿があまりなかったのだとか。親切心からいつも自分の家に泊めていたオーナーですが、その後自ら旅館を立ち上げることを決意。
写真は初代オーナーご夫婦
そうして平屋から始まった新興旅社は、その後現在のビルへ改築され、何十年にも渡って大勢の旅人や行商人が訪れる宿となりました。
ロビーには、当時使用していたというテレビやカセットレコーダー等が置いてあります。今ではなかなかお目にかかれないビンテージ品の数々!
「おばあちゃんだから、触らないでね(我老了,請勿摸我)」と台湾らしい可愛い注意書きも
床や階段なども当時のものをそのまま使用しているとのこと!その保存状態のよさにびっくりです。「うちのお客さんは昔から皆とても丁寧に扱ってくれているのよ!」と話す羅媽媽。レトロ建築好きにはたまらない♡とっても素敵な雰囲気あふれるロビーです。
ちなみにこの台鉄「苗栗」駅はちょうど自転車での台湾一周(中国語では「環島」とよばれています)のルートに当たるそうで、その道中で訪れるお客さんも多いそう。そのため1階の奥の吹き抜けは、自転車置き場になっていました。
さて、台湾の古い建物ではお馴染みのテラゾ(粉砕した大理石をセメントと練り混ぜ、滑らかに磨いた人造石)の階段を上ってお部屋に向かいましょう。2階、3階が宿泊フロアーとなっています。
2階にあがったところには、共有の休憩スペースがあります。
こちらにもかつて使われていた看板など、お宝がいっぱい…!すべて、実際にこの民宿で使われていたものだそうですよ。この装置は昔フロントで使われていた各部屋の内線を繋ぐ電話機なんですって!アンティーク好きにもたまらないインテリアの数々です。
フロアの真ん中は1階からの吹き抜けになっていて、その周りにお部屋があります。
今回宿泊したのは、3階の二人部屋。 お部屋にはダブルベッドにテーブルと椅子がすっきりと置かれています。
ミニクローゼットや姿見、またエアコンのほかに扇風機も設置されています。
今の日本じゃなかなかお目にかかれない、黒電話風の電話も現役です。
壁のタイルは創業当初から使われているものなんですって!
トイレやシャワールームはコンパクトで清潔に保たれています。こちらのお部屋には可愛いタイルの浴槽もありました。私が泊まったお部屋はシャワーの水圧はかなり弱めだったので、強いのが好みの人はご注意を。バスタオル、ドライヤー、歯ブラシ、シャンプー、ボディーソープなども用意されています。
宿泊者の方から水周りの設備が古いと言われることも時々あるそうですが、 昔の建物を保存することを第一に考えているため、配水管等の問題もあって、 最新のホテルのようには改装できないそうです。
「この昔のままの良さを分かってくれる方に泊まっていただけたら嬉しいわ」とお話されていました。
さて、さきほどのお部屋の写真で、ベッドの布団が可愛く畳まれているのに気がつきましたか?
こちらは布団をお花のように見立ててたたんだ「棉被花(ミェンベイ ホア/miánbèi huā)」という客家文化。昔の旅館は部屋の装飾も簡素だったので、華やかにお客様をおもてなしするために行われていたのだそう。
棉被花の畳み方はなんと何十通りもあり(!)、一代目オーナーから直伝してもらった羅ママは20通り近くの畳み方をマスターしているそう。こちらも綺麗に形を作るには、練習が必要なんだそうです。この棉被花が見られる旅館は、今ではとても貴重ですよ!
代々大切にされてきたこの文化を後世に伝えていくために、新興大旅社では不定期で「棉被花」の教室も開いているとのこと。興味のある方はぜひ事前に問い合わせてみてくださいね。
民宿の1階には、三代目オーナーのケリーが運営するカフェ「老地方咖啡」が併設されています。
もともと羅ママは娘さん達が小さい頃、この場所でかき氷などのスイーツを売っていたそう。「老地方」と名付けられたお店は大繁盛で、当時この辺りでデートにいくといえばここだったそうですよ!
そんな想い出が詰まった「老地方」の店名と場所を三代目オーナーが引き継ぎ、数年前にカフェへと生まれ変わりました。台湾の若者カルチャーを象徴する文青(ウェン チン/wén qīng)系の雑誌やチラシもたくさん!
のんびりと時間の流れる空間で、ケリーの淹れるコーヒーをいただきながら、かつての「老地方」や苗栗の人々の生活に想いを馳せてみてもいいですね。
※カフェ営業時間:10時~18時
新興大旅社の二代目オーナーの羅パパ・羅ママのご夫婦の想いを引き継ぐのは、二人のお子さんである三代目姉妹のティファニーとケリーです。
近年、こうした民宿文化が一気にブームとなった台湾。
老舗旅館が生き残っていくのも容易ではないといいます。もともと台北へ出て仕事をしていた娘達も数年前に帰ってきて、旅館再生に力を貸してくれているのよ、と羅ママが嬉しそうに語ってくれました。カフェのオープンも娘さん達が手がけたものだそう。
そんな話をしていると、羅パパが「新興大旅社の歴史をより多くの人に知ってもらうために、娘が企画して動画も作成したんだよ」とパソコンを開いて紹介してくれました。
歴代オーナー達の新興大旅社を大切にしてきた思い入れと努力、そして旅人達をまるで家族のように迎え入れてくれるおおらかなお人柄がとてもよく伝わってきます。
最近、台湾で人気のレトロ建築を紹介する書籍シリーズ「再訪老屋顔」にも掲載されたそう(本シリーズ1冊目の「老屋顔」は、「台湾レトロ建築案内」という邦題で日本でも出版されていますよ)。
なんだか自分の実家に帰ってきたように心温まる時間を過ごすことができて、翌日の皆さんとの別れが惜しくなってしまったほど。旅人にまた必ず戻って来たいと思わせる、そんな魅力あふれる旅館でした。
台湾鉄道「苗栗駅」から徒歩2分、鉄道の旅にとても便利な立地です。近くにコンビニや飲食店もあります。 また、歩いて5分程度のところに「北苗公有零售市場」とよばれる伝統朝市があります。苗栗現地で採れた野菜や果物、また、台北の市場では見られない客家の伝統的な食べ物も売っています。
ほかには、朝から行列ができるほど大人気の綠豆湯(緑豆スープ)の屋台なども。
ぜひ苗栗の地元の雰囲気とローカルグルメを味わってみてくださいね。
★ さらに沢山の写真をチェックしたい方は Dear b&b へ
男女混合。トイレ・シャワーは共有。安全の都合上、16歳以下/60歳以上の方の宿泊はできません
ダブルベッド1台、トイレ・シャワーあり。2階又は3階。1人で宿泊の場合は割引あり
ダブルベッド2台、トイレ・シャワーあり。2階又は3階。
・チェックイン:15時~18時(18時以降になる場合には要事前連絡)
・チェックアウト:11時
・チェックアウト後の荷物の預かり可
・エレベータはありません(3階建て)
・朝ごはんの提供はありません
・共用の冷蔵庫あり
・共用の洗濯機あり
・夜中12時以降の出入りはNG
・駐車場あり
・連泊(3泊以上)の割引あり
Dear b&b とは?
Dear b&b は、台湾各地の厳選した民宿を紹介する台湾発のサービスです。 女性の運営メンバーたちが旅行客の視点で「安心・親切・おもてなし」を軸に、施設やオーナー、周辺環境までを細かく評価し、選び抜かれたとっておきの民宿だけを紹介しています。現在はHowtoTaiwanと提携し、日本語での問い合わせに対応しています。
http://dearbnb.com (中国語のみ)
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